ニュースレター

2018-02-21
Newsletter February 2018: 米国就労VISAトレンド
多くの在米日系企業にとって日本企業文化をよく理解し日本語で業務を遂行できるローカル社員の確保は重要課題。こういった人材の採用のために積極的に就労ビザのスポンサーを行ってきた企業も少なくない。弊社(アクタス)のような人材紹介会社に人材募集の依頼を行った際に、担当のリクルーターから、「ビザのスポンサーはしていただけますか?」という質問を受けるものだと思う。前回のニュースレターでも少し触れたが、政権が交代し、むやみに外国人を採用しているからアメリカ人の雇用の機会が失われている、という見解のもと、各種就労ビザの審査基準が厳格化。昨年4月18日に発令された大統領令、Buy American and Hire Americanによって外国人労働者の米国の入国及び雇用による移民審査の厳格化が進み、昨年の4月に申請をした社員のH1Bビザ申請が却下されてしまった、まだ審査の結果が届いていない、というご経験をされた企業も少なくないのではないだろうか。

これは何も日本企業のみにとっての問題ではない。外資であろうとなかろうと、現在のマーケットのニーズに対応した労働力の確保に頭を悩ませる企業は数多く、その悩みを外国人の採用に積極的になることで解消の道を探ってきたことから、現政権のこの政策によって、多くの米国の企業が問題を抱えることになった。H1Bビザ申請の解禁日である4月1日を目前にして、H1Bビザのスポンサーをするべきかどうか決めかねておられる企業の皆様や今後の人材採用計画を考え直さなければとお考えの企業の皆様への情報として、今回は、最近受けたいくつかの就労ビザトレンドに関するウェビナーの内容を簡単にまとめてみたいと思う。

上述の大統領令、Buy American and Hire Americaが発令された後、8月には国務省のForeign Affairs Manual(外交マニュアル)にビザの発給に関して“to propose new rules and issue new guidance … to protect the interests of United States workers in the administration of our immigration system…”(アメリカ人労働者の権利を守る)という新しいガイドラインが追加され、移民局、労働局はもとより、世界中の大使館・領事館に改定されたマニュアルが送られた。審査の厳格化とともに移民局から追加書類提出の指示も数多く出され、審査期間が大幅に長引くことに。特にH1Bビザがターゲットになり、昨年の申請に対し、前年度の2倍以上の追加書類提出の指示が出されたそうだ。また、申請が却下された主な理由は、申請された職業は「専門職とはみなされない」との見解、そして、申請された賃金ではH1Bの基準では専門職レベルとはみなされない(レベル1=エントリーレベル)、という見解だった。法律自体が改正になったわけではない。法律の改正には議会での審議・決定が必要で簡単なプロセスではないが、法律の解釈の仕方、つまり見解は簡単に政権の姿勢に左右され、その見解を基に法律が適用されるのが現状。

H1Bビザは専門職用のビザで、学位をベースに専門職に就く外国人の就労を許可するものだが、専門職、としてこれまで多くの申請が承認されてきたComputer Programmerが専門職としてみなされなかったことや、H1Bビザの申請にあたり、申請者の賃金を決定する際に標準とされるPrevailing wageのレベル1ではH1Bビザを承認する専門職に就くことのできる条件を満たしている申請者ではないとの判定は、前年度の審査の傾向によって予想されるものではなかったことから、H1Bビザの申請の受付が終了してからのこの”見解“の変動はスポンサー企業が予想していなかった多くのH1Bビザ却下につながった。従って、今回のH1Bビザ申請をお考えの場合は、弁護士と申請ポジションの専門性についてよくご相談されること、また、申請ウェージの決定にあたってはThe Foreign Labor Certification Data Centerのデータより、申請するエリアとポジションによって設定されている4段階のウェージレベルのレベル2以上を選択することが必至だ。このデータはこちらのhttp://www.flcdatacenter.com/ リンク先でリサーチが可能。例えば、ニューヨーク市エリアのMarketing SpecialistのLevel 2 wageは時給$30.45(年収$63,336)。

就労ビザの審査が厳しくなったのはH1Bだけではない。非移民ビザ全般について言えることで、L、Eビザも当然対象にされており、駐在員のビザ申請にもてこずるケースが発生しているとのこと。ただし、LやEはH1BビザのようにPrevailing Wageという縛りがないため、申請者の資格や組織内での社員の配置など、申請者の経験といった条件が満たされれば、移民局や大使館での申請は管理職としての申請の場合H1Bビザよりも可能性が高いかもしれない。管理職用Eビザの近年のトレンドは、管理職としての経験をかなり重要視されていることで、管理職としての経験が少なくとも2~3年、できれば同じまたは同等の業界での経験が求められている。

また、申請内容の証明を厳しく求められるのは必至で、部下として申請書に名前を連ねる社員の学歴や年収も申請に含める必要があり、辻褄の合わない申請が承認されることはほぼありえない。EビザやLビザにも、専門職として申請できるレベルがあるが、これは、相当の専門性、特殊性が必要で、会社として特許を持っている技術の担当者であるなど、かなり条件が厳しく、H1B以上の専門性の証明を求められることから、なかなか実現することがないビザと言えよう。また、Eビザ(ステータスも含め)には申請者の国籍とスポンサー企業の国籍の合致、Lビザは申請社員のグループ内企業での職務経験年数条件があり、これらの基本的な条件が欠いていると申請は不可能。

ビザ申請に関して、もう1点特記すべきことは、これまでは更新時の審査はよほどのことが無い限り最初に承認された申請内容で承認されてきたが、今後はそれが期待できなくなった、ということ。更新時にも新規の申請と同様に取り扱って審査するように、というガイドラインが出されており、3年前にウエージレベル1でH1Bビザの承認を受けた社員も、更新時にはレベル2以上の給与設定や、ポジションの見直しも必要になる可能性がある。あくまでもガイドラインなので、現状では更新申請に関してはまだ担当審査官の判断によるところ、とのことで、申請内容の見直しをせずに更新申請を行っても必ずしも却下されるとは限らないが、ガイドラインの浸透と共にリスクが高まることは間違いがない。全てのビザ審査が厳格化したことを受け、なんとか外国人の労働力を確保したいと道を探る企業がJ1やH3ビザといった本来は研修用のビザの利用に殺到したことから、これらのビザの審査も厳しくなりつつあり、もともとJ1ビザに対して批判的なコメントを出していた現大統領でもあることから、J1ビザの行く末も不安だ。

こうして就労ビザの審査トレンドが厳格化している中、雇用ベースのグリーンカード申請の審査にはまだそこまで影響が出ていないようだ。そこで、鍵になるビザホルダー社員は更新を迎える前にグリーンカードの申請によって長期的雇用を計画することも検討する必要がある。現在、グリーンカードの申請は、最低2年ほどの期間がかかっており、また、昨年から、アメリカ国内で最後のプロセスを進める場合も全申請者に面接を義務付けることになったことから、グリーンカードの取得までの時間が長引くことも予想される。従って、万が一、グリーンカード申請中に現在保持している就労ビザの更新ができなかった場合は、申請者は国外にてグリーンカードの承認を待つことになり、一時的に雇用関係の解消にもつながることになりかねず、グリーンカードの申請を進めていても、結局は申請の取り下げとなり、経費の無駄遣いにつながることも考えられる。従って、今後、リテインが重要なローカル社員は、日本本社や他国の海外拠点と協力し、グローバル社員化を検討していく必要があるのではないだろうか。

ちなみに、H1Bビザ、Eビザ、Lビザと新規・更新ともに申請にかかる費用は弁護士費用も含め全て雇用主が負担するものである。またグリーンカード申請においては第一段階(グリーンカードの申請は全部で3段階)にかかる経費は全額会社が負担しなければならない。弁護士費用は通常リテーナー制度でH1Bの抽選に漏れたから、ビザ申請が却下されたから弁護士費用を返却してもらえるものではない。また申請が却下されたからと言って弁護士費用の返却を求めることも、移民局に支払った申請料金も返却されないので、リスクの高い申請は、費用の無駄遣いになりかねず、しっかりとした準備を行い、よく弁護士と相談をしたうえでのビザ申請をお勧めする。

最後に、現在H1B,L1A/l1B,E2ビザスポンサーをしておられる企業は、移民局からの突然の監査訪問を受ける可能性が昨年度の4~5倍に増加したことから、常に監査対応ができているよう、準備を整えることが必至。例えば、雇用者(直属の上司も含む)とビザ保持者が、ビザ申請書の内容を理解しており、監査官から個別に質問されても、同じ回答ができるようにしておくこと、ペイスタッブ上の給与が申請ウェージと合致しているまたはそれを超えていること、また、ビザ申請について知識のない一般社員には、監査官からの質問には対応せず人事担当者や管理職にすぐに連絡することを徹底させるなど、社内対策を構築しておくことも重要だ。また、移民局や労働局からの監査員だと名乗る人物の訪問の際は、必ず監査員としてのIDや政府機関の職員であることの証明書類の提示を求めることも大切である。