ニュースレター

2012-09-01
Newsletter 2012年9月号 スペシャリストであるローカル社員を管理するためには?ジャー
日本ではジェネラリストとしてのキャリアの形成が一般的ですが、アメリカでは スペシャリストとしてキャリアを積みステップアップを目指すのが成功 の秘訣 と考えられています。ここで言うジェネラリストとは、事務処理業務から営業、 経理、企画、そしてマネージメントまで幅広く全てを経験を積み オールラウン ドプレーヤーとしての管理職を目指すことを指し、それに対してスペシャリスト とは、ある特定の分野、たとえば営業職なら営業職、それ もできるだけ同じ業界の営業職として経験、知識、ネットワークを蓄積し、その道の専門家として自分の価値を高めていくことを指します。

日本の企業 は新卒で採用した社員に対し長期的な雇用を前提にさまざまな部署にローテーションすることによりこのよ うなジェネラリストを育成しますが、at will雇用のアメリカでは長期的な雇用 を前提に会社が社員を育成する概念が既に失われつつあるため、個人が自分の マーケットでの価値を常に意識 し、自らの手で昇給、昇進を手に入れるものと 認識されており、ジェネラリストとしてご活躍をされてアメリカにご赴任された 駐在員の皆様は、ローカ ル社員である部下の仕事に対する姿勢や会社に対する ロイヤリティーなどの認識の違いに頭を悩まされることも多いのではないでしょ うか。

上述どおり日本では定期的に新入社員をある程度のボリュームで採用し人事計画 に基づいて社員の育成を図るため、社員の転職意識もまた、転職のための絶好のチャンスもそうないことから、一社または非常に限られた転職の回数によって キャリアを形成することが一般的で、会社の辞令によって部署や 業務内容の変 更を何度も経験するものですが、アメリカでは既に述べたとおりのキャリア形成 なため一社における平均勤続年収も日本人と比べて非常に 短く、一生に7回以 上の転職をすることもごく普通のことと考えられています。このような、即戦力 でありつづけ、マーケットでのニーズに応えていく ことでキャリアを形成する アメリカでビジネスを成功させていくためには、経験豊富で専門分野の知識やス キルに長けているスペシャリストを採用する ことが企業にとって大切であることは言うまでもありません。

そこで今回はジェネラリストとしてキャリアを積んできている日本人駐在員の管 理職がスペシャリストである部下の管理を行うにあたり、どのような準 備と対 応が必要なのかについてまとめてみました。:

• 日本ではあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、米国企業の多くは、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)がなければ各人の仕事が成立しません。各ポジションに応じて作成される職務記述書にはさまざまな内容が記載されています。たとえば、具体的な職務内容や職務の目的、目標、責任、権限の範囲のほかに、そのポジションとかかわりをもつ社内外の関係先、必要とされる知識や技術、資格、経験、学歴などが挙げられます。
o この職務記述書は、採用から人事考課、組織変更に適用され、従業員の適切な管理のためには欠かせないもの。
o 従業員が職務記述書に明記されていない仕事を拒否することは米国ではよくあるパターン。しかし職務内容や範囲などをしっかり職務記述書に記載することによりこの問題を回避することが可能。

• スペシャリスト文化にもかかわらず、アメリカで働く多くの労働者は組織内の異動に合意することはあります。しかしその一方で部署を配置転換することは、自身のキャリアに対してマイナスになると理解されている人が殆どといわれています。
o アメリカの会社は一般的にこの様な社内異動のオプションを該当従業員に伝え、彼らに決定権を与える。
o 更に、多くの企業は人員を必要とする社内の職務を掲示し、従業員からの応募を受け付ける。

• ジェネラリストは一つの企業で自分のキャリアを展開することができる一方で、スペシャリストは次のキャリアの一歩を踏み出すために中小企業へ転職せざるを得ない状況にあることもあり、在米日系企業にとっては条件さえ整えることが出来れば、良い人材を採用できるチャンスがあります。
o 自身のキャリアを大切にする人は、基本的に責任を持って会社の任務を実行するタイプが多い。
o 候補者に対して、自身の専門分野以外のものを期待してはいけない。

• これ以外にスペシャリストである部下を適切に管理するためには何か必要なのでしょうか。
o 従業員のそれぞれの個性や専門性を理解し、仕事に生かせるような育成環境の提供を忘れてはいけない。個人のキャリアの発展に繋がる限りはスペシャリストたちは離職はしない、結果、責任をもって会社の仕事に貢献することとなる。

o 人事考課においては、個人の専門分野における経験や知識も含めて検証し、成果に対しては見合った評価を実施し、報酬を与えることであろう。

ダンカン・エルダー
duncan.elder@globalbridgehr.com

記事提供:GlobalBridgeHR