ニュースレター

2010-08-01
Newsletter 10年8月 II
8. 死亡時の支払い:死亡した従業員の最終給与と税金の計算は複雑である。最終給与小切手の受取人を決定することがまず最初の問題となる。遺族のうち誰が最終給与を受け取る権利があるのか或いは死亡した従業員の財産へ支払いが為されるべきかについては州法が先行するであろう。更に、いつ支払いが為されたかによって税金の換算の仕方も変動してくる。例えば、連邦の規定下では、従業員が死亡したカレンダー年に最終給与が支払われた場合、FICA taxes*Federal Insurance Contributions Act(連邦保険寄与法の税金)のみが控除され、死亡した従業員のW-2上に報告されることになる。そして連邦所得税の支払いがForm 1099-MISC上に受取人或いは支払いを受け取る法的代理人の名義で報告されることになる。対して従業員の死亡した翌年に支払われた場合、税金の控除は一切なく、W-2 は発行されないが、前述の例のようにForm 1099-MISCは発行されることになる。更に、死亡前に従業員へ発行されたが換金されていない小切手は、受取人或いは支払いを受け取る法的代理人に対して支給されることになる。なお、連邦で定められた必要条件に加えて各州によって州法が異なる。
9. 法的和解金 雇用期間中のミスクラシフィケーションによる残業未払いなど法的和解が従業員から申し出される場合、これらの和解はIRS により未払い分の裁定額が検討され、その年に支払われるべきだった賃金に対し課税されることになる。和解の一部として従業員が退職金を受け取る場合は、(上記3にもあるように) IRSの定める源泉課税率が適用されることになる。更に、弁護士費用や懲罰的損害賠償金をカバーするために従業員へ支払われたいかなる金額も総収入に含まれ、W-2フォームへの報告義務がある収入とみなされる。
10. 最終給与のプロセスおよび支払い期日の必要条件:多くの州が最終給与の支払い期日を明確に設定しており、但しその支払いは通常のペイロールサイクル内に発生しないことが頻繁に発生するため、マニュアルチェックを発行することを義務付けているケースが多い。15州以上において(例:インディアナ州・アイオワ州・カンザス州・メリーランド州・ニュージャージー州・ニューヨーク州など)最終給与の支払いは次の通常発生する予定の給与日までに支払えば良いという設定である一方、約20州(例:アラスカ州・オレゴン州・カリフォルニア州・ハワイ州・イリノイ州・マサチューセッツ州など)においては即日・次の営業日或いは3日もしくは72時間以内の支払いを義務付けている。これらの州では、最終給与支払いのタイミングの目的上「通常の給与」の定義には注意を払うことが雇用主には重要となる。従業員の給与にコミッションが含まれる場合は、勤務時間分とコミッションは各州法に遵守し適時に支払われる必要がある。
11. 最終給与の郵送:従業員が最終給与の郵送を希望する場合、雇用主は従業員に正しい住所と従業員の署名が記された依頼レターの提出を求めるべきである。また、最終給与の小切手を郵送する場合は配達されたことが証明可能なcertified mailなどで郵送することを薦める。
12. 年末時のプロセス:全てのW-2上には1月31日までの消印が押されている必要があり、これには雇用関係が終結した元従業員も含まれる。前年末前に自主退社したあるいは解雇された従業員に対しては、雇用主は雇用関係終結後であればカレンダー年の終わりまで待たずにいつでもW-2を郵送する事が出来る。W-2は常に元従業員から知らされていた最新の自宅住所宛に郵送されるべきで、雇用主は郵便局から郵送不可で戻ってきた全てのW-2を4年間は保管しておく必要がある。
13. 未請求の給与:請求者のいない最終給与小切手についての問題は雇用主の間で増加中である。一般的に、雇用主には最終給与小切手のような請求者のいない所有物の報告および送達が州により義務付けられているが、請求者のいない所有物に関して定められている条件や規定は各州により異なる。配達不可で雇用主へ返送された小切手は、州のunclaimed property departmentへ引き渡されるまで一定期間雇用主の下で保管されなければいけない。大半の州では請求者のいない賃金を1年後に引き渡すよう雇用主に義務付けているが、1年以上の期間において保管を許可している州も幾つかある。
最終給与の計算は複雑で、また最終給与を準備するタイムフレームも短い設定になっているケース(州)もあることから、雇用主が可能性のある全ての要因を考慮しそれらを含めた明確なプロセスを書面で保持しておくことが肝要である。最終給与が正確且つ完全に手配されることを確実にするために、その計算や配付のステップを含めたチェックリストを準備しておくことを薦める。
2010-08-01
Newsletter 10年8月 I
自主退社・引退あるいは死亡などの理由にかかわらず雇用関係の終結に際して雇用主は複雑なプロセスに頻繁に直面するが、特に最近では最終給与の支払い計算とプロセスが複雑化している。
一般的に、通常の給与・有給休暇やその他の休職・golden parachute awards(特恵的退任手当)・ non-qualified deferred compensation(無制限の据え置き報酬)・ ストックオプションや退職金を含む従業員の最終給与を計算する際は、考慮しなければならない従業員の報酬が幾種かある。
最終給与支払いのタイミングは州法により規定が定められており各州により様々である。幾つかの州では最終給与の支払い期日を即日或いは次の給与日までに義務付けており、ペイロールプロセスを複雑にしている。従業員が賃金差し押さえ通告を受けていたり、flexible spending account(フレキシブル支出口座)に加入していたり、給与の前借あるいは雇用主から借金している場合にはペイロールプロセスは更に複雑化することになる。
下記は最終給与支払いを計算する際に考慮する点の幾つかのハイライトである:
1. 通常の給与:時給制社員に対しては最終就労日までの全ての勤務時間分の支払いをする必要がある。俸給制のエグゼンプト社員に対してはFair Labor Standards Act(公正労働基準法)の下、勤務開始の最初と最後の週の給与は一週間分全て支払うことは義務付けられておらず、勤務時間分だけを日割り計算して支払うことが許されている。
2. 有給休暇およびタイムオフ:雇用関係終結時に有給休暇の残余分が支払われるべきかどうかについては、雇用主の就業規則内の規程にどのような記載がされているかで決定される。カリフォルニア州・コネチカット州・イリノイ州などのように加算した有給時間は「勤労時間」とみなし、雇用関係終了時に従業員に対して加算済みで未使用の有給休暇分の支払いを雇用主に義務付ける州も幾つかある。その一方で、メリーランド州・ニュージャージー州・ニューヨーク州・オハイオ州・ペンシルバニア州などのように、雇用主の定める規程に任せる或いは明確に定めていない州も多く存在する。
3. 退職金および一定率の源泉課税:退職金は補足給与とみなされるのでIRSの一定率の源泉課税計算の対象となる。IRSは所得層ごとに義務付けられている源泉課税表の代わりに使用可能な二種類の一定率での源泉課税計算を提供している。あるカレンダー年内に$1 millionを超過する補足給与支払いに対しての源泉課税率は35%、$1 million未満に対しては25%となっている。更に、多くの州では補足給与上の一定率の源泉課税へ対して割引きが提供されている。
4. ローンおよび前払い金:雇用関係の終結する従業員がローンを返済し終えていない場合、たとえ従業員が雇用関係が終結する時点でローン完済をする旨が記載された契約書に署名していたとしても、支払われるべき残高が結果として全勤務時間に対する最低賃金を下回るような場合、雇用主は最終給与からその分を差し引くことは出来ない。幾つかの州では雇用主は従業員に対して全ての勤務時間分をフルで支払うことが義務付けられ、従業員が雇用主に返済義務のある未払いの借金に対するいかなる額も最終給与から差し引いていけないというような法律もある。
5. 賃金差し押さえ通告:賃金差し押さえ通告の出されている従業員との雇用関係が終結する際は、雇用主には賃金差し押さえ通告を監督するそれぞれの機関や裁判所に対して報告する義務がある。
6. 会社の所有物:会社所有物が返却されるまで最終給与の支払いを保留することは、多くの州では許可されていないので、雇用主は細心の注意を払う必要がある。
7. Flexible Spending Accounts (FSAs)フレキシブル支出口座:FSA が提供されている場合、プラン年の初めに給与削減に合意することにより従業員はFSAの借り換え選択が義務付けられている。従業員が損失を被り受領資格のある費用を支払う場合、通常従業員は各口座から今度は従業員へ返済することになる雇用主或いはFSA 管理者へ支払い証明書を提出する。しかし雇用主にとって大きな問題となるのは、従業員がプラン年内に特定額の入金を合意した際にプラン年の早い時期に資金の大半を使用してしまい、従業員に対する全ての繰り延べがプランに入金される前に雇用関係が終結される時であろう。そのような場合、雇用主或いはプランは従業員の入金額以上の返済額となる超過分を失うことになるが、雇用主の損失を最小限に食い止めるための規程の設定はFSAの必要条件違反となってしまう為、雇用主がこの超過分の支払いを免れる方法は存在しない。