ニュースレター

2009-07-01
Newsletter 09年7/8月
通常、いじめとは小中学生の間で発生しているものと考える人が多いが、大人の間でもいじめは存在し、会社で働く者達もこの種の行動には常に耐えざるを得ない思いをしているかもしれない。大声を上げたり、罵ったり、悪口を言う、または他の侮辱的行動を為す上司、間違いを非難する同僚、重要な会議やランチに誘わない、担当顧客を理由なしに減らしたり取り上げる、または屈辱的な仕事を与えて従業員を不利な立場に置く(罰する)などのマネージャーが例として挙げられるだろう。
従業員1,000 人以上を対象に2007年に実施された全国調査では、44% が不正な上司が存在する会社で働いたことがあると回答した。また教養ある従業員がこのようないじめをより多く経験していることも分かった。大学の学位を持つ回答者のほぼ半数もしくは47%がいじめにあったことがあると回答し、高等学校教育またはそれ以下の学歴の回答者でいじめにあったことがあると回答したのは34%であった。サンフランシスコを拠点とするEmployment Law Allianceは、皮肉的な冗談、下品な格好、同僚の前で職務遂行能力について嘲けること、侮辱的言動や大声を上げること、または故意に無視することなどのような不正な態度は、差別やハラスメントとして問題視され対処されることが少ないと述べている。
専門家は職場でのいじめを、個人の能力を傷つけることを目的とした同僚や部下に対する「故意に繰り返される苦痛を与える虐待」と定義している。いじめは身体的な攻撃行為よりもむしろ心理的影響を及ぼす傾向があり、例としては「silent treatment(無言で行われる不正な待遇)」、大声を上げること、必要な物資の提供を差し控える、悪行への非難、過度の批判または罰として嫌な(意地悪な)仕事を負わせることなどがある。職場でのいじめは常に存在してきてことは明らかだが、訴訟への焦点が増加する今日において、この問題に雇用主も従業員もより一層注目するようになってきている。
性的または人種上の「いやがらせ」とは異なり、敵対的職場環境を作り上げる「いじめ」は従業員の保護されるべきステータスとして非難の的にはなっていない。また法的には違法でないため、いじめはその他のハラスメント形態に比べて今までは十分に注意が向けられてこなかった。しかし雇用主としてはいかなる類の行為であろうが、全ての職場でのハラスメント行為は被害者などが訴訟を起こした際に「その行動が人種・性別・年齢・障害・宗教もしくはその他の保護されるベき分類に絡むものだった」と主張される可能性が高いことを認識しておくことが重要である。
頑固な上司または意思の強い従業員が一線を越えていじめの加害者になった時点を正確に決定付けることは難しいが、雇用主がいじめを防止し、その問題を提言するためにできる具体的なことが幾つかある:
- 全ての苦情を真剣に受ける セクシャルハラスメントまたは差別の苦情とは違い、多くの雇用主は職場でのいじめに対して十分に注意を払わず、その申し立てを従業員が関心を引くために言い出した事として簡単に片付けてしまうことがよくある。優秀な従業員が加害者側に絡んでいる場合は尚さら厳しい行動を取ることを渋るかもしれないが、解決すべき潜在的問題が存在しないことを確実にするためにも、全ての苦情を調査することが重要である。
- 従業員のフイードバックに耳を傾ける 正式な苦情に至らないような行為であっても、いじめの加害者が存在するかどうかを職場内の人間関係や行動から推察すべく、日ごろ従業員たちが交わしている会話に注意を払う。また、退職時に従業員との面談から得るフイードバック、マネージャー、スーパーバイザー、顧客やベンダーからのフイードバックなども調べ、転職率、欠勤率、生産性、ベネフィットコストや採用補充率のような客観的な指針にも注意を払う。
- 注意を払い調査を行う いじめの対象者が保護されるべき部類に属するかどうかを検討し、プライバシーの侵害、名誉毀損、法律で雇用主に義務付けられている休職の承認を拒否するようなその他の法的問題にいじめが関連しているかどうかを調べる。
- 外部のヘルプを使用する 有効性については議論されるところであるが、提案としては外部のconflict management consultantに連絡を取ること、(保険のオプションとして加入している場合は) employee assistance programを加害者に参照するように言及する、断固とした警告や懲戒を科すことなどが挙げられる。職場でいじめの加害者に対してアクションを取る前には常に用心して書類を作成して記録を残すこと。特に年齢もしくは人種のような保護されるべき部類に属する攻撃的な従業員が含まれる場合は訴えてくる可能性が高いため必ず書面に落とすことが重要である。
- 今ある規程をレビューする 既存の規程に違法な差別行為についての記述が欠けているような場合は、反ハラスメント規程の表現がいじめを含むすべての種の職場ハラスメントを網羅するように書き換えを検討する。規程に含まれるべき最低限の内容としては、職場で容認されない行動とは何か、および組織内での地位に拘らず加害者には結果としてどのような処分が取られることになるか、を明記すべきことである。
- 匿名ホットラインサービスを提供する 匿名による苦情を申し立てられる外部のサービスがある場合は、従業員は社内の誰かに話すよりもそれを利用する可能性が高い。
- 意識調査を実施する これは従業員が、会社・マネジメント・ベネフイットなどに関してどう感じているかをあぶりだすのに優れた手段である。
- トレーニングを実施する ハラスメントトレーニングの実施の機会を設け、いじめについて話す。respect-in-the-workplace training (職場での礼儀、顧慮について学べるようなレーニング)やconflict-resolution training (問題解決について学べるようなトレーニング)の実施を考慮する。