ニュースレター

2008-02-01
2月号ニュースレター
<訴えた従業員に対して雇用主が訴えること>

雇用主は時折、会社に対して全くメリットのない又は無駄な(と自分達が信じる)訴訟を起こした従業員に対して形勢を逆転しようと試みる。そんな雇用主達にとってオハイオ州の最高裁判所が「例え保護された活動であっても訴訟を起こした従業員に対して雇用主が訴訟を行うことは必ずしも不当な報復とは見なされない」と判決を下したのは朗報である。
Greer-Burger v. Temesi, Slip Op. No. 2007-Ohio-6442 (2007).


Greer- Burger社のケースは、元従業員が雇用主に対してセクシャルハラスメント訴訟を起こしたが陪審員が雇用主に有利な結論を出したため、逆に雇用主はこの元従業員に対し懲罰的損害分も含めた賠償を求める訴訟を起こし、その賠償金を以って先のセクシャルハラスメント裁判で費やした弁護士費用分を賄おうとした。
対して、元従業員である女性も「雇用主の裁判は自分が起こしたセクシャルハラスメント裁判に対する報復である」としてオハイオ州人権局(OCRC)に告訴した。

OCRCは雇用主の起こした訴訟の背景を全く考慮することなくこの訴訟は報復であると判断し、これによりOCRCは保護されている活動を行った従業員に対して雇用主が訴訟を起こすことを事実上禁止した。しかしながら今回のOCRCの決断に対してオハイオ州最高裁判所は「雇用主の訴訟が報復とみなされるのは客観的に見て全く根拠のないものである場合に限る」という判決を下し、保護された行動に従事した従業員に対するすべての訴訟が報復ととられるわけではないという全く逆の見解を示した。

上のように今回は雇用主に優位な判決が出たものの、保護される活動に従事した従業員に対する雇用主からの訴訟が報復行為ととられる可能性は依然として高く、雇用主がこのような訴訟を起こす時は今後も慎重に行わなければならない。裁判所の見解では雇用主が訴訟を起こすことを容認してはいるが、だからと言って申し立ての成功が確証されるわけではない。従ってこの類の訴訟を起こす前に雇用主はその動機や可能性を注意深く確認するべきである。